生成AIをデザイン業務に取り入れることは、デザイナーにとって多くのメリットがあります。しかし、すべてのデザイン制作をAIに頼り切ってしまうと、そもそもクライアントが求める問題解決とはかけ離れたデザイナーの自己満足に陥ってしまうケースもあると考えられます。
今後も生成AIが進化していくのは疑いようがありませんが、それはデザイナー自身がスキルや知識を磨く必要がなくなるというわけではありません。これからのデザイナーに求められるのは、AIと上手に付き合いながら、AI技術の進化と制作者自身のスキル向上を融合しながら、より良い制作物を生み出していくことではないでしょうか。
ここでは、生成AIを活用することで得られる「メリット」と「デメリット」をご紹介し、デザイナーがAIとどう付き合っていくべきなのかを考えるキッカケになればと思います。
生成AIを活用するメリット
生成AIを活用することで、デザイナーが経験値から生み出すデザインと、デザイナーがイメージするものとはまた違った視点で生み出すデザインを用いることで、双方の良い部分を組み合わせて新たなアイデアをつくりあげることができるようになります。
画像素材の選定や作成・撮影の手間とコストを削減できる
画像、ベクター、イラスト素材などを有料でダウンロードするストックサービスに契約する場合、それなりに費用がかかります。また、多くの制作会社やクリエイターがある一定のストックサービスの素材をダウンロードして利用しているため、他者の作る制作物と同じ素材を利用することになることも予測されます。
また、人物や物撮りなどの画像素材を自ら用意する場合、カメラマンのスケジュール、モデルの日程調整など、時間も費用も負担しなければならず大変です。
そこで生成AIをうまく活用することで、制作者の負担を軽減することが可能となり、コストも抑えられ、効率的にデザイン制作に集中することができるメリットもあります。
誰でも画像加工ができる
生成AIを利用することで、画像のレタッチや修正など、これまで時間をかけてデザイナーのスキルを磨いて実現してきたことが、個人のレタッチスキルの有無にかかわらず、誰でもできる環境に変化してきています。もちろん求める画像素材のクオリティやオリジナリティを求める場合もあるためすべて生成AIで解決するわけではありませんが、デザイナー個人のスキルに依存しなくても、いくつかの工程を自動化することで何倍もの作業の効率化が期待できます。
違った配色パターンなどバリエーションを増やしてくれる
デザイナーが制作したデザインをもとに、別の配色パターンなどを即座に生成してくれることで、複数の案出しを必要とする際に、デザイナーの手間も時間も節約してくれます。
生成AIのデメリット
AI機能に頼りすぎることにより、本来デザイナーに求められる創造性や問題解決能力が弱まり、デザイナーの存在意義を見失っては意味がありません。あくまでもAI技術は人間の手助けをするためのものであって、すべての判断までをAiに委ねて、作り手が何もしないというのでは、デザイナーの価値をも否定することにつながります。
最終的にクライアントが求めることに、応えられるデザインが出来上がっているのか?作りあげたものが最適解なのか?その判断を下すのは人であるべきです。その点を理解した上でAI技術に依存することなく、デザイナーとしての判断はしなければならないということを覚えておきましょう。
デザイナー自身がスキルを学ばなくなる
誰でもAIを活用することで、驚くようなデザインや画像を作成することが出来るようになりました。それはつまり、デザイナーでなくてもそれなりのデザイン制作物が出来てしまうということ。これくらいなら私でも作れるということで、デザイナーに依頼するまでもない!という判断がされやすくなってきていることを指します。「デザイン=誰でも簡単にAIでできる」という楽観的な解釈によりデザイナーの価値が失われてしまう可能性もあります。
また、デザイナーになりたいというデザイン初心者が、様々な知識や経験よりも、AI操作のスキルばかりに目を奪われてしまい、自らのデザイン自体のスキルを磨かなくなってしまう恐れもあります。デザインとはそもそも魅力的なグラフィックを創ることではありません。デザインを通してクライアントの抱える問題を解決することが主たる目的です。そのことを理解せずにデザインを便利な生成AIに頼ることだけにフォーカスしてしまうことがないように気をつけましょう。
まとめ
AI技術の進歩により、各企業が前向きにAIを取り込うようになってきました。無人レジや無人販売、チャットシステムなどAIやコンピュータにより人件費もマネジメントも負担しなくて良いというメリットを求めて、自動化できるものは自動化していく流れに変化してきています。人がしてきたことをAIで自動化することにより、作業効率が上がりミスも減っていく。生成AIを活用していくということは、一見メリットしかないように思えたりもしますが、気付かないところにデメリットが生まれてしまう可能性もあります。便利だから、効率的だから、という視点だけでなくAIと人がうまく共存できる関係性を築いていくことが重要だと感じます。