かつて『シックスセンス』(The Sixth Sense/1999年)という映画がありました。
死者が見える少年と、彼をサポートする児童心理学者が体験する「未知の世界」と2人の交流、そして少年が自分の持っている第六感とどう向き合って生きていくかを描いた映画でした。
本題とは直接関係のないものではありますが、「感覚」というものを考えた時に思い浮かぶ、「五感」について考えていきたいと思います。
人間の持つ五感とは?
まずはじめに、私たち人間には一般的に「五感」というものが備わっています。様々な「欲」が人にはありますが、その欲を生み出している根底となるのがこの「五感」と考えられています。
人間の持っている「五感」
- 視覚
- 聴覚
- 味覚
- 嗅覚
- 触覚
以上の五つです。
デザインに関連して考えると、広告メディアにより「料理/食べ物」を紹介する際に、TV・ラジオ・雑誌・チラシなど、それぞれの媒体種類によっても対象とする五感は違うことはご存知かと思います。
例えば、
TV | 視覚・聴覚 |
ラジオ | 聴覚 |
雑誌/チラシ | 視覚 |
こうしてみると、五感すべてに訴えかける広告表現というものは、そう簡単に出来るものではないということがわかります。
最近では、「匂いを発するディスプレイ」や「触って感触を確かめることのできるパッケージデザイン」など、少しずつその幅は広がってきていますが、今後もさらに発展を遂げるていくことでしょう。そのうち味のついたチラシなんていうのも出てくるのではないでしょうか?
先程もありましたが、印刷物における表現は主に「視覚」に訴えかけるのが目的になります。
今回は、基本的な印刷物における「食料品/食べ物」の広告において、見る人に「これ食べたい!」と思ってもらえるには、どうすれば良いのか?
そのひとつの考え方をご紹介します。
見る人の食欲をそそるには?
では、視覚で五感を刺激するとはどういったことなのか、使用する素材写真のクオリティなどが大きく影響してくることは勿論ですが、デザイナーとして考えなければいけないことは、「最終的に見る人がいかに食べたい!と感じるかどうか」です。
その見る人が「食べたい!」という欲求を感じるようになるには、いくつかの要素・要因があります。
「その人の過去の体験を呼び起こさせる」ことができるかどうか
今まで一度も食べたことのない「料理」などに対しては難しいことですが、一度は口にした事があるような食べ物であれば、その人が過去にそれを口にして「おいしかった!」という記憶を呼び起こすことで、必要以上の言葉や装飾がなくても食欲をそそることができます。
梅雨が明け、夏のはじまりに店頭に並ぶ「スイカ」を見つけたときに、大きくて丸い緑のスイカを見ると、ついつい厚い皮の中に隠れた真っ赤なみずみずしい味わいを想像してしまったりすることはありませんか?または、子供の頃に川原や海で遊んだ「スイカ割り」などを思い出す人もいると思います。
そういった、人それぞれの過去の体験を呼び起こすことで、「もう一度それを味わいたい」と感じ、その欲求を満たす為に料理を注文したり、商品を購入したりという行動につなげてもらうことが目的になります。
稀にこの食べ物には「良い思い出がない!」ということから悪影響を与えてしまう可能性も否めませんが、一般的にその人の本来持っている経験値から、その人自身の欲を沸き立たせ欲求を満たす商品を提供するというひとつの手段と考えられます。
視覚以外の感覚を刺激できるかどうか
「視覚」という感覚を利用して「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」に影響を与えることを考えます。
例えば「フライドポテト」の広告であれば「サクサクッ!」や「サックサク!」などの文字効果で「音」と「食感」を表現し、「聴覚」と「触覚」を刺激します。
別の例で言うと「シュークリーム」などは「パリパリッ!」や「ふっわふわ!」などで、外側の生地のパリパリ感や中身の生クリームのふわふわ感を「音」と「食感」で訴求することで、これから「それを食べる自分を想像してもらい」思わず「食べたい!」という欲求につなげられるかということを考えることも大事な要素になるでしょう。
食べ物に関する擬音語や擬態語
- ジュウジュウ
- ジリジリ
- グツグツ
- コトコト
- カリッ
- カリカリ
- サクッ
- サクサク
- プリッ
- プリプリ
- ホクホク
- ホカホカ
- アツアツ
- キンキン
- ぷるぷる
- ボリボリ
- とろとろ
- もちもち
- シャキシャキ
- ほのかに
このように、「食料品/食べ物」などの販促物や広告物、メニューなどを作成するにあたって、ビジュアル的なデザイン性とは別に、心理的に人の心に訴えかける表現ということも考えていくと、デザインの幅や楽しみも広がっていくのではないでしょうか?
普段何気なく買っている「お菓子」や「ドリンク」などを、そういった視点で見直してみてください。気付かないうちに作者の意図にまんまとハマッて購入していた!など、面白い発見があることでしょう。それが理解できれば次は、自分が誰かの「五感を刺激する番」ですね。