家族について考えるとき、
思い浮かぶのは重松清の物語だ。
どこにでもあるような親子の会話、
少し昔のことのような親の横顔。
あたりまえに過ごしていた親との時間がどこか懐かしく、
すべてをわかっていたようで、
何もわかっていなかったんだと気付かされる。
何か引き寄せられるように「みぞれ」を手に取っていた。
『みぞれ、角川文庫、重松清』
田舎に帰るたびに、思う。
ほんとうに僕が訊きたいことは、一つしかないんだと。お父ちゃんは、まだ生きていたい?
生きていることは、楽しい?
なんの楽しみもなくても、一日でも長く生きていたい?決して訊けないから、その問いは脳の奥から消えることはない。
それが消えたとき、僕は生まれて初めての喪主をつとめているだろう。
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