生きるために壊れてきた

ハンチバック

市川沙央(いちかわさおう)さんは、1979年生まれの筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症および人工呼吸器を使用している方で、2023年に『ハンチバック、文芸春秋、市川沙央』で第128回文學界新人賞を受賞し小説家デビュー。続けて同作で第169回芥川龍之介賞も受賞されました。

療養のため就職が難しく小説家を志しライトノベル小説を書き続けて応募を続けていましたが、約20年の歳月を経て見事小説家デビューを果たしています。

芥川賞の会見での挨拶が非常に印象に残るもので、障がいの有無に関係なく読書ができる「読書バリアフリー」について「新ためて環境整備をお願いしたい」と訴えました。また、このハンチバックを「怒りだけで書きました。」と述べるほど、出版業界に向けての強い思いが感じられます。

SNSなどでも非常に叩かれやすい時代にも関わらず、自らの言葉で主張を貫く姿は人間としての強さがあってこそのものだと感じます。

市川さんの言葉遣いに個性があり、いくつかきちんと理解できない単語がありました。久しぶりに意味を調べるという行為をしたように思いますが、おそらく日常的にそのような言葉遣いをされているだろうなと思います。普段あまり聞きなれない言葉が多いことや、表現の仕方が強いので会見での「怒り」というものが文字からでも感じ取ることができます。ただの文字であるにも関わらずそれだけ思いを乗せることができるというのは簡単なことではないはず。

生きれば生きるほど私の身体はいびつに壊れていく。
死に向かって壊れるのではない。生きるために壊れる。
生き抜いた証として破壊されていく。